左右の色を間違わずにはける靴下

 

平成17年の6月、岡山市で行なわれた福祉用具研究会であぜ編み靴

下とリュウマチ患者さん向けで新開発した指先に引っ掛けて履く靴下を

展示しました。

この指かけ式の靴下を触りながら

「履きやすそうで、なかなか良いアイディアですね」

そして

「視覚障害者の皆さんは右と左が同じ色になっているか気にされ、その

ため同じ色のものを買われます]

「見えないからこそ色々な色を楽しみたい。この技術を応用して左右同

じ色がはける靴下を開発してください。」

「ユニバーサルデザインで小売価格は1000円までで」

初対面なのに注文の多い人だなと思いつつ名刺交換をしたところ大学

の先生でした(広島国際大学 坊岡助教授)。

2ヶ月余りで10種類ほどの試作品を作り、先生より紹介された視覚障

害団体でモニタリング、

1ヵ月後

「私は点字をやるのでわかりました。しかしできない方はわかりません

でした」

「視覚障害者は約33万人で点字のできる人はそのうち約1割、糖尿病

が原因で視覚障害になる人が多いので年をとっての点字習得は難しい

です。

それにしてもこの靴下、踵の方向がすぐわかり蒸れなくて履きごごちが

いいので重宝しています」

視覚障害者の方々の現状を十分把握しないで試作した事に赤面の思

いでした。

これをご縁に数多くの助言をいただきながら多くの試作を行いました。

「これなら点字ができない方でもわかるでしょう。知り合いの老盲人ホー

ムに同行しますので皆さんに評価してもらいましょう」

10人の点字ができない方に集まっていただきました。

「これは3本ですね。何色なのですか」 「ピンクです」

「アッ、わかった2本だけど何色ですか」 「グレーです」

「○○さん、あんた派手好みだからピンクにしたら」

「派手すぎるので無難な1本の黒の方がいいわ」

このような会話が続くなか

「目のみえない私たちがこのような会話ができるなんて夢のようです」

「私たちのために良い靴下を開発してくださりありがとうございました」

帰りの車中で

「専務さん、ご苦労様でした」

こみあげるものがあり、返す言葉がでませんでした。

後日、アカデミィー賞受賞のレイチャールズの映画を夫婦で鑑賞した時

でした。

レイチャールズ氏が公演にでかける準備で靴下をバックに入る時の息

子との会話で

「パパ、そんなにいろんな色の靴下を持っていくと色を間違って履いてし

まうよ」

「ママが番号を付けた刺繍をしてくれてるので間違わないで履けるんだ

よ」

のシーンで

私の手にそっとおいてくれた女房の手の温もり、女房は記憶にないそう

です。

P11-1

紳士用 24~26cm 色:黒  コン  グレー  カラシ

婦人用 22~24cm 色:黒  コン  グレー カラシ ピンク  ミント

品質:綿85% ナイロン10% ポリウレタン5%

 

 

左右の色を間違わずにはける靴下

 

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